建築家 小堀哲夫氏×大林組設計部 木村達治/三木千春/浅沼拓也(司会:梅野麻希子)
私たちはどう働きたいのか。私たち建築設計者はどのようなワークプレイスを創造すべきか。Happyに働けるワークプレイスの手がかりを見つけるため、建築家・小堀哲夫氏と大林組設計部ワークプレイス改革担当者のディスカッションを企画し、2020年1月に顔合わせを行った。その後、期せずして新型コロナウイルスが世界中に広まった。Web会議・テレワーク中心の働き方へと急速にシフトした今、このウイルスがもたらした予期せぬ変化で設計者は何を考えるべきなのか。同年6月に意見交換をし、10月に対面ディスカッションを行った。これらの対話によって、私たちが目指すこれからのワークプレイスを探る。
ゼネコンだからこそできる働き方
木村達治(以下、木村)|大林組の本社では島状対向配置の昭和型レイアウトが昔から続いていて、設計部としてクリエイティブな仕事には向かないという違和感をみんなが持っていたんです。そこで、設計部員が自ら動いて情報を集めにいき、他者と互いに情報発信ができるような空間に改修しました。フロアの長手方向中央にzipと呼んでいる通路を通し、その両脇に奥行きが浅くなった執務スペースと自由に利用できるオープンスペースを並べています。フロア中央のアトリウム沿いにはレビューコーナーなどの人が集まりやすいhubとなる空間を配置しています。中央の通路がジッパーとなって、hub やオープンスペースで起こる出来事を周囲に開き、またつなぎ合わせるようなイメージです。
浅沼拓也(以下、 浅沼)|東北支店設計部は30名程度が在籍していて、全員でワークショップを実施して意識を高めるところから取り組みました。生命や自然の要素を取り入れるバイオフィリックの考え方で素材を選び、規模が小さく空間的な自由度が少ない中でも豊かさを感じられるように工夫しています。
小堀哲夫氏(以下、小堀氏)|バイオフィリックといえば、観葉植物をオフィスに置くときにそれぞれの植物に世話係の名前を貼っておくと、世話の頻度が植物の鮮度に現れて世話係本人の元気のバロメーターになるんです(笑)。